セパタクローのボールのような編み方で、本数を増やすとどうなるか?


Takraw Ball

Takraw Ball

セパタクローのボールは、6本のバンドを編むようにして作られています。

これをPPバンド(荷造り用のバンド)で作ってみました。

セパタクローのような編みボール(6本)

セパタクローのような編みボール(6本)

これは非常にバランスの良い形をしています。
一つ一つのバンドは、ただの輪っかなのですが、これが上下上下・・・と互い違いに組み合わさることで、強度が増しています。

さて、この、セパタクローのボールの形状について、数学的な特徴を考えると、以下の点があげられます。

  1. 各バンドの中心の線は、球面上の大円である
  2. どの3つの大円も、1点で交わらない

 

大円とは、球面と球の中心を通る平面の交線で表される、球面で最も大きな円です。
2は、球面上の3つの大円が以下のように1点で重ならないことを表しています。

3本が1点で交わる

3本が1点で交わる

このようにならずに、必ず上下上下・・・と交互に編まれた形となっている、ということです。

さて、このような条件を満たす編み方は、他にはないのでしょうか?
気になります。
気になったので、作ってみました。

もっと本数を増やすことはできるか?

本数を10本に増やすと、以下の形が作れます。

セパタクローのような編みボール(10本)

セパタクローのような編みボール(10本)

6本に比べて、少し複雑度が上がりましたね。

そもそも、球面上に6個の大円をバランスよく配置したものが、6本のバンドで作るセパタクローのボールだったわけですが、この6つの大円とはどのような配置だったのでしょうか。

大円を6個選ぶというと分かりづらいですが、これは、球の中心を通る平面を6個選ぶことと同値であり、それはつまり、その平面に垂直な直線を6本選ぶことと同値です。
つまり、球の中心を通る6本の直線を引くことと同じです。

セパタクローのボールの場合、正二十面体の各頂点とその対極にある点を結ぶ対角線6本が、その直線になります。

正二十面体は、頂点の数が12個なので、正反対にある位置同士の組がちょうど6つになります。
これは、正十二面体の各面の中心と、その反対側の面の中心を結ぶ直線としても同じことです。

正十二面体あるいは正二十面体が、セパタクローのボールのベースにあることを考えれば、5角形が12個できる形であることも納得がいきます。

そして、これを踏まえて考えると、

正二十面体の頂点12個を使って6本の直線を引いたのだから、
正十二面体の頂点20個を使って10本の直線を引いても同じようなことができるのではないか?

と思い至ります。
そして、実際、その通りに考えて作ると、上記のような10本で編んだ形が出来上がるのです。

さらに本数を増やすことはできるか?

すぐに思いつくのは、正十二面体や正二十面体の辺の数が30本であることから、

「各辺の中心を通る直線15本を基準に作ったらどうか?」

ということです。
しかし、これはうまくいきません。
3つの大円が1点で交わる場所が出てきてしまうからです。

ですが、10本より増やす方法は他にもあります。

方針を変えて、正八面体(もしくは立方体)をベースに、12本をうまく配置して作ったのがこちらです。

セパタクローのような編みボール(12本)

セパタクローのような編みボール(12本)

8角形の穴が6個、立方体の各面に対応する位置にできています。

12本でバランスよく編む編み方は、他にも何通りか考えられます。

12本が限界?

12本が限界かというと、もちろんそんなことはありません。

複雑かつ大きくなりすぎて、実際に作ることはできませんでしたが、30本を以下のように編むことができます。

セパタクローのような編みボール(30本)

セパタクローのような編みボール(30本)

立体視(交差法)で見えるように、微妙に視点を変えた絵を並べています。
寄り目をするような感じで重ねて見ると、立体的に見えます

ちょっと複雑すぎてどこに対称性があるのかわかりづらいので、同じ形の穴を同じ色で塗り分けてみました。

セパタクローのような編みボール(30本)色分け

セパタクローのような編みボール(30本)色分け

これもぜひ作ってみたいと思ったのですが、15mm幅のPPバンドで作ると、直径が1m38cm という超巨大なボールになってしまうことがわかり、作成を断念しています。
さすがにちょっと家の中に置いておけないサイズですよね・・・。

同じ本数での編み方は一通りか?

さて、今度は別の視点で、

「同じ本数で他の編み方はないのか?」

ということを考えてみます。

セパタクローのボールは6本のバンドで編んで作ったのですが、実は、同じ6本でも、以下のように他の3通りの編み方があります。

セパタクローのような編みボール(6本)の4通りの編み方

セパタクローのような編みボール(6本)の4通りの編み方

同じ6本で編んで作ったものでも、穴の形が違っていて、何角形がいくつあるかで区別できます。
左から順に、

・一番左(セパタクローのボール)
5角形×12
3角形×20

・左から2番目
6角形×2
4角形×18
3角形×12

・左から3番目
5角形×6
4角形×14
3角形×12

・左から4番目
5角形×4
4角形×16
3角形×12

となっています。

ちなみに、5本だと1通りしかありません。

7本以上だとどうか?

本数が増えればパターンの数も増えます。

はっきりした数は分かりませんが、少なくともこれくらいはありそうです。

  • 7本 – 9通り
  • 8本 – 29通り
  • 9本 – 73通り
  • 10本 – 204通り
  • 11本 – 497通り

「少なくとも」と書いたのは、上記の本数を調べたやり方が、

・ランダムにn個の大円を選ぶ
・何角形が何個ずつになったか確認する

というのを100万回ずつ調べただけで、正確な数である保証がないからです。
「何角形が何個ずつ」という数自体が同じでも、配置の仕方によっては別物になる可能性もあります。

30本バージョン、どなたか是非作ってみてください!

以上、セパタクローのボールから始まる数学的考察と工作でした。

10本で編むボールの解説をしているページはあるのですが、それ以上の本数で作ったという情報は、軽くググった限りでは見つかりませんでした。
30本で編んで作ったら世界初かも!?
個人的には見てみたいので、どなたか興味を持った方は是非作ってみてください。

 

Category: 数学 | Tags: ,